- 2022/07/26
- 2024/04/11
福祉・介護業界でのVR活用事例5選!体験や研修に効果的
現在、日本では高齢化が進んでおり「福祉」「介護」への理解は、以前よりも重要なものであるという認識が広がっています。
そんな「福祉」「介護」ですが、VRを活用することで要介護者やその家族、また介護・福祉業界で働く方々にとってさまざまな効果が期待できます。
「福祉・介護業界でVRを使うとどんな効果が期待できるの?」
「実際の活用事例を見てみたい」
この記事では、福祉・介護業界にVRを導入する効果や活用事例をご紹介していきます。VRの活用を検討している方はぜひ、参考にしてください。
目次
1.福祉・介護業界にVRを導入する効果とは?
福祉・介護業界にVRを導入する効果は3つあります。
- 要介護者への理解と共感
- スタッフのトレーニング・育成に役立つ
- リハビリ・レクリエーションの幅が広がる
1-1.要介護者への理解と共感
相手を理解し、共感できれば、相手の立場を考えながらコミュニケーションができるようになるため、お互いにより良い関係を築くことができます。しかし「理解し、共感する」というのは、なかなか簡単なことではありません。
そこでVRを活用して要介護者の立場を疑似体験することで、どんな想いや苦労を感じているのか理解し、共感することができます。
これはケアをするスタッフはもちろん、福祉・介護に直接関係のない方々に対しても効果的です。
例えば、要介護者の家族が体験することで家庭でのサポートを振り返る機会になったり、介護施設を建設する際に利用者目線を体験することで、より良い環境づくりなどにも役立てることができます。
1-2.スタッフのトレーニング・育成に役立つ
2つ目の効果として「スタッフのトレーニング・育成に役立つ」という点が挙げられます。
基本的にトレーニング・育成をするには、トレーナーが必要となります。しかし、介護・福祉業界の課題といえば深刻な「人手不足」。
そこでVRを活用することで、映像を見ながらまるで先輩に教わっているかのように研修をすることができ、実践的にノウハウを学ぶことができます。
またスタッフの目線だけではなく、要介護者の視点も学ぶことができるので、これまで以上に人に寄り添ったケアを意識づけることも可能です。
1-3.要介護者のリハビリ・レクリエーションの幅が広がる
スタッフの皆さんは、施設利用者一人ひとりに合ったリハビリやレクリエーションを提供したいと考えるのではないでしょうか。そんな時にもVRコンテンツは役立ちます。
仮想空間を上手く活用しながら楽しんでリハビリができたり、外出が困難な方でもリフレッシュできるようなコンテンツも体験できるのです。
2.福祉・介護業界のVR活用事例|認知症や難聴体験も
福祉・介護業界で実際にVRが活用されている事例をご紹介します。
- 認知症の理解に「認知症体験」
- 聞こえにくい世界を体験「VR難聴体験」
- リハビリを加速させる「旅行体験」
2-1.認知症の理解に「認知症体験」
認知症の症状は「物忘れ」だけではありません。人それぞれ様々な症状があります。様々な症状から起きる、日常生活を送る上での”困難さ”を実話をもとに再現しているコンテンツが数多くあります。
実際に認知症の方の立場を疑似体験することで、街中や電車の中、家族との会話の中など様々な場面で、認知症の方々がいまどんな状況にあるのか(何を求めているのか、どんな気持ちなのか)ということが想像できるようになります。気持ちを理解し、人として寄り添えるような、より良いケアにつなげることができそうですね。
▶︎▶︎VR認知症プロジェクト公式サイトはこちら
2-2.聞こえにくい世界を体験「VR難聴体験」
Deaf VRは聴覚障害についての理解を深めるために開発されたプログラムです。難聴体験会でよく行われる、耳栓やイヤーマフで耳穴をふさぐようなものは実際の難聴の方の聞こえ方とは明らかに違うそう。というのも、難聴者は聞き取りにくい周波数の音があったり、様々な音を取捨選択できなかったり…。単に聞こえないだけではないんです。
そこで、VRを用いて道路や、カフェ、食卓など様々なシーンで難聴の方がどのように聞こえているのか、どんな不自由さを抱えていてどんな気持ちなのかということを疑似体験できるのがこのプログラムです。
聴覚障害だからと言って、耳元で大きな声で話せばいいというわけではありません。それぞれの人がどのように感じているのか、どのように聞こえているのか、しっかりと理解しようとすることが大切です。このように他者の視点を疑似体験できるのは、VRの大きな強みですね。
▶︎▶︎(開発元)株式会社シー・エヌ・エスHPはこちら
2-3.リハビリを加速させる「旅行体験」
実際にこちらのプロジェクトを立ち上げた、登嶋 健太 さんはクラウドファンディングのページで、以下のように綴っています。
要介護者の多くが「身体が不自由になったらどこへも行けない」と諦めていることに気がつきました。外出困難な高齢者に世界一周旅行を体験していただき、外にいる喜びを再び感じてほしい。「行ってみたい!」と感じてもらうことで単調で辛いリハビリを続けるモチベーションを高めたい。
– [引用元] READRFOR
リハビリに励む方々に、海外旅行体験を届けたり、故郷に帰るような体験「VR里帰り」も実現しているそう。VRではなく自分の足で現地に行き、自分の目で、自分の耳で、現地を感じたい。
そんな希望を与え、リハビリへのモチベーションを上げてくれるようなサービスです。
▶︎▶︎プロジェクト紹介ページはこちら
3.介護の仕事を体験できるVR活用事例
介護というのは、どうしても「大変」というイメージがありますよね。
しかし実際の介護はどのようなものか、あまり知らない方も多いのではないでしょうか。実はVRを用いることで介護を体験し、知ることができるのです。
そしてこのようなコンテンツは、介護士を目指す方や新人教育にも活用することができます。
ここではVRで介護を体験できるサービス・コンテンツをご紹介します。
- 現場を体験「ケアブル」(2021年6月30日をもってサービス終了)
- 介護福祉士の仕事を体験「VR介護福祉士体験」
3-1.現場を体験「ケアブル」
こちらは、株式会社ジョリーグッドが提供する「ケアブル」というサービス。『第16回 日本e-Learning大賞』において最優秀賞となる「大賞」を受賞しました。こちらの「ケアブル」は、介護の現場で起こりうる様々なシーンを、介護スタッフと被介護者の両方を当事者目線で体験することができる介護研修VRサービス。
いま、どの施設や福祉団体も深刻な人手不足に悩んでいます。そして初任者が入ってきたとしても、日々の業務は変わらず行わなければなりません。そういった中、初任者への十分な研修の機会を確保することは大変困難です。
そこでVRを活用することで、先輩スタッフがいない時間もVRでの予習・復習や疑似体験を通して、現場力を培うことができるのです。こういった対人サービスでは、教科書的な知識よりも現場の経験が重視されることが多いので、リアルな雰囲気を疑似体験できるVRは、現場力を高めるための研修との親和性が高いです。
※「ケアブル」は2021年6月30日をもってサービスを終了しています。
▶︎▶︎ケアブル公式サイトはこちら
3-2.介護福祉士の仕事を体験「VR介護福祉士体験」
介護士が普段どんな仕事をしているのか、どのように被介護者と接しているのか、こうして疑似体験をすると介護の現場に対して持っていたイメージが少し変わるかもしれませんね。
また、介護の現場では離職の問題も深刻。介護を志す前の段階でリアルな現場を広く知ってもらうということはミスマッチを防ぐ上でも大切です。
こういった業界では、想いを持って働いている方がたくさんいたり、仕事のやりがいに繫がる素敵なシーンがあります。イメージが先行しがちではありますが、VRによって多くの人にリアルな姿が届くことを願っています。
4.リハビリに活用できるVRサービス
最後に、リハビリに活用できるVRのサービスを集めましたのでご紹介します。
- mediVRカグラ
- リハまる
- emou
- MindMotion
- Floreo
4-1.mediVRカグラ
株式会社mediVRによって提供されている自力運動訓練装置です。
VRゴーグルを装着して仮想空間内の様々な観光地を散策します。実際に名所を訪れるような感覚を楽しみながら訓練を行います。
観光地巡りを通した歩行訓練の他にも、腕の基本動作、反射動作を繰り返し行う訓練にも使用されます。
mediVRでは水戸黄門ゲームという反射的に印籠を差し出すコンテンツが提供されています。
腰に手を回し、悪者が出てきた時に印籠を取り出すというユニークなリハビリです。このリハビリによって、腕の動きを回復させるだけでなく反射神経を養うこともできます。
▶︎▶︎mediVR公式サイトはこちら
4-2.リハまる
株式会社テクリコによって提供されているリハビリ用コンテンツです。
VRを使用したリハビリのうち、「理学療法」、「作業療法」、「ミラー療法」で使用するコンテンツを提供しています。それぞれ、「脳トレリハビリアプリ」、「身体を動かす!運動リハビリアプリ」、「ミラーリングアプリ」と呼ばれています。
「脳トレリハビリアプリ」では、空間上に表示された数字がどこにあるのか探します。
「身体を動かす!運動リハビリアプリ」は理学療法に基づくリハビリを行う際に使用されます。仮想空間上に舞い散る紙吹雪を手に持ったコップですくうことで上肢を動かし、障害がある箇所の回復に努めます。
「ミラーリングアプリ」は片麻痺を起こした上肢、下肢のリハビリに用います。通常、片麻痺のリハビリを行う場合には自分の上肢、下肢を鏡に映して行います。左右対称に同じ動きをしているか確認するためです。
指先、手首であれば卓上サイズの鏡で十分ですが、腕、足のリハビリを行う場合には大きな鏡が必要となります。体全体を映す必要があるからです。そのため、リハビリを行うためにはある程度のスペースが必要となります。時には専用の部屋を用意しなければならない場合もあります。
しかし、「ミラーリングアプリ」を用いればこうした大掛かりな設備は不要です。つまり、鏡が無い場所でもリハビリを行うことが可能となるのです。
▶︎▶︎リハまる公式サイトはこちら
4-3.emou
株式会社ジョリーグッドが提供するVRリハビリ用コンテンツです。
このアプリケーションは発達障害者向けのリハビリに使用されています。ソーシャルスキルトレーニングを行う際にVRゴーグルを装着し、仮想空間内で人とのかかわり方、自分の身の回りのルールについて学習していきます。
ソーシャルスキルトレーニングでは自分が遭遇する場面の全体を見て物事を判断することが重要です。通常のトレーニングの場合、ロールプレイする相手は療法士だけになります。周囲の状況についてロールプレイできないという欠点があります。
しかし、VRであれば、仮想空間上で遭遇する場面全体を体験することができ、より実社会に近い形でトレーニングを行うことが出来ます。
なお、emouに関しては基礎的な学習の他、就労移行支援にも活用されています。
▶︎▶︎emou プレスリリースはこちら
4-4.MindMotion
MindMaze社によって提供されているリハビリテーション療養システムです。脳卒中により手足の運動機能が麻痺した患者に対して行われる「神経リハビリテーション」で活用されています。
MindMaze社からは「MindMotion PRO」、「MindMotion GO」という二種類のリハビリ用機器が提供されています。
この製品に関しては、VRゴーグルを装着するタイプとは違い、患者の手の部分をモーションキャプチャで取り込みモニターに仮想空間と手の動きを映し出すようになっています。こうすることで、療法士、患者双方が動きを確認しながらリハビリを行うことができます。
4-5.Floreo
Floreo社によって開発された、自閉症を持つ子供向けの教育用コンテンツです。VRゴーグルを装着しゲーム感覚で人とのかかわり方、生活上のルールを学びます。
特筆すべきはそのコンテンツの多さで、自閉症用プログラムは6モジュール存在し、1モジュールあたり5~6レッスンあります。合計すると34レッスンものコンテンツとなります。
各コンテンツはシチュエーション別に分かれています。例えば横断歩道での立ち振る舞い、学校での会話、教室でのルール、カフェテリアでの会話、外出時に警察官に声を掛けられたら、といった具合に具体的な場面を想定したレッスンを受けることができます。
▶︎▶︎Floreo公式サイトはこちら
5.まとめ
この記事では、福祉・介護業界がVRを導入する効果や活用事例をご紹介してきました。
福祉業界にVRを導入することで、「福祉」・「介護」の形を少しづつ良い方向へと変えることができるかもしれません。
VRtipsを運営しているリプロネクストでは、福祉・介護業界のAR/VRやメタバース活用について企画から開発までサポートしています。「こんなコンテンツは作れるだろうか」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
「VRtips」は株式会社リプロネクストが運営しています。
ビジネスでVRコンテンツや段ボール製VRゴーグルを活用したいという方は、
お気軽にご相談ください。